2009年5月11日月曜日

見えない光明。

この旅最初のミッションは中国四川省で震災1周年関連。
 (しょっぱなから硬いな~…。。。)

※ミッション遂行日 2009年5月10日
 
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 昨年の5月12日に発生した「四川大地震」
 僕は生まれも育ちも神戸市で、阪神淡路大震災で被災した経験もあって、どこか他人事とは思えない出来事だった。
 去年8月には、夏休みを利用して被災地を訪問&取材。(帰国後関西の情報番組でOAされた、ってか自分の職場だった) 
 旅に出た日が5月7日というのも、震災から1年の5月12日に間に合わせるためだった。
 
 昨年に訪れていることもあって、勝手は分かっているのですんなりと都江堰に到着。
 成都から到着するバスターミナルは、再建はされていないもののバス停としての機能は復旧していて活気に溢れていた。

都江堰バス停

 ただバス停から町の中心地の方を見ると、青く高い壁が通り一面に立てられていた。
 何でも成都から鉄道を通しているとのこと。

 バイクタクシーで町の中心部へと入る。
 日本のニュースでも大きく報道された、崩壊した小学校や病院では、大きな瓦礫はすでに撤去されていて更地となっていた。商店が並ぶ大通りでは、多くの建物が半壊していて使用禁止の張り紙が貼られている。
しかしその1階ではもう商売が再開されていて、威勢の良いかけ声や、電気店からは大音量で中国ポップスが流れている。

「建物のヒビ?そんなの上からいろ塗ったら分からないだろ?もう大丈夫さ」
 たくましい限りである。

修復中家

 実際に補修中の建物を見たが、ヒビ割れにセメントを埋めて平らにして、その上から真新しいペンキを塗っていた。こうしてヒビを隠さないと解体されてしまうからだ、と言うが、それでは何の解決にもなっていない。


 都江堰は1000年以上の歴史を持つ世界遺産の町。一見大きなビルが建ち並び近代化しているようだが、その裏にまわると、古い家の間にビルが立っているといった様なモザイク型の町になっている。
 路地も細く、重機が入れない場所も多いため解体作業が思うように進んでいない。
しびれを切らした住民たちは、放置されている全壊指定の建物を自分たちで「上塗り」して、何も被害がなかったように見せて、そこで商売を始めたり、住居として転売したりしているという。

復興作業中。

 昨年、ぐしゃぐしゃに壊れていた市場は瓦礫の撤去が進んでいて、空き地では新しい商業施設の建設が急ピッチで進められていた。


残された団地
 
 しかし、だだっ広い更地の中には、ぽつんぽつんと今も数件の団地が解体されずに残されていて、荒野おきざりにされた案山子のように裏寒い背中をさらしていた。
 近くに行ってみると何やら人が住んでいる気配もある。
 崩壊寸前の団地から出てきたのは70代のおばあさん。

「今はみんな成都に行ってしまって、住んでるのは私たち年寄りばかりだよ。ビルを建ててるだろう。あそこで働いてるのは、田舎から出てきた人ばかりさ。私たちの家族には仕事がないんだ」と語る。

僕たちの話し声を聞きつけて、別のおばあさんが団地の隣にあった掘っ立て小屋から出てくる。
「政府からの生活支援は去年、とっくに打ち切られたんだ。家を買うお金なんかあるわけない。だからこうして暮らしているんだ」と出てきた小屋を指さす。
 どうも、瓦礫の中から使えそうな木材やトタンを引っ張り出して家(見た目にはゴミのかたまり)を作ったそうだ。
 「ここもいずれ追い出される。そしたらどこに住んだらいいのよ?」

瓦礫の家


四川政府は震災直後から町の郊外に大規模な仮説住宅群を建設している。
ただ、数が足りない。
去年に訪れた仮設住宅では8畳ほどのコンテナハウスに、2家族10人が肩を寄せ合って暮らしている家もあった。
親戚や身寄りの多い人は、まがいなりにも雨露をしのげて余震の恐怖から解放される仮設住宅に入ることも出来たが、そういったつながりの少ない人たちは自然と弾かれてしまい、行き場を失って再びヒビが走った我が家へを舞い戻ってきているのだ。


寂しい通り


都江堰で一番賑やかだったという通りには、暇を持てあました売春婦がタバコをくゆらせ、時折通りかかる僕みたいな物好きな観光客にガサガサした声で呼びかける。

「200元でいいわよ」

銀紙ゴミが風に吹かれてかさかさと転がり、過去の栄光をいつまでも想い語る老兵の瞳のように鈍い光を反射させていた。

9万人が犠牲となった大災害。町全体を崩壊させた大地震。
たった1年で全てが元通りになるはずもないが、復興の手があまりに遅いのではないか。
大局を見据え鉄道を通すのも大切だろうが、住民の目には突きつけられる苦境しか移っていない。
その温度差はそのまま、いずれ生まれ変わるであろう新しい町の姿の中に埋設されるように思えてならない。





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